最初からフルスロットル!至極のエンターテイメントアニメーション『キルラキル』の魅力に迫る!

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2007年、アニメ制作会社ガイナックスによって作られた「天元突破グレンラガン」。この作品は当年、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門において優秀賞を獲得するなど、大きく話題となりました。

そして2011年、グレンラガンを手がけた大塚雅彦、今石洋之、桝本和也らが新しいアニメ制作会社TRIGGERを設立。最近では『リトルウィッチ・アカデミア』や『SSSS.グリッドマン』、『プロメア』など、作るアニメは人気を誇っています。

TRIGGERアニメの作風をひと言で表すならば「これぞアニメーション!」といったところでしょうか。どの作品であっても、映像が非常になめらか、かつ大胆で、アニメの本質は動く絵にあるのだな、という当たり前のことに気が付かされます。そんな一級品のエンターテイメントアニメを作り上げるTRIGGERが、最初にオリジナル作品として発表した『キルラキル』の魅力に迫っていきたいと思います!

目次


最初からフルスロットル!

平穏なのは、最初の20秒だけ

冒頭、教室で授業が行われているシーンから始まります。生徒たちが静かに座っているのも束の間、開始からわずか20秒後には生徒会四天王の蒲郡苛(がまごおり いら)が荒々しく入室します。実際の身長を超えて、教室いっぱいに入りきらない、さながら巨大ロボットサイズとなって登場するという迫力の演出です。

そこからは大波乱。文字にすると「学園に歯向かった生徒を、風紀委員長が罰する」というだけのことなのですが、それをあまりにもダイナミックなまでに演出します。

わかりやすい構図

上手と下手で明確に

まず、蒲郡が怒声を浴びせます。歯向かった生徒は教室を飛び出しますが、ただ単に生徒が逃げ回るというだけにしては、その絵の動くこと動くこと。追いつかれた生徒は、蒲郡によって校庭へ投げ出されてしまいます。その生徒を追うカメラの動きの激しいこと激しいこと

大きく飛ばされた生徒は画面の右から左へ、すぐさまカメラが追いつくと、今度は生徒が左から右へ。視点は地面スレスレから、激しく転がり回る生徒を追ってあちらこちらと激しく揺らぎます。主人公がラスボスと対峙するシーンで力が入っているというのであれば納得できますが、開始1分半でここまで激しい戦闘シーンを描いてしまうのには驚きです

続いて、地べたに横たわる生徒を下手(しもて)に置き、上手(かみて)には仁王立ちの蒲郡の圧倒的な存在感。この作品における「生徒会の支配力」が演出されています。また、蒲郡に差す後光が学園にそびえ立つ塔と共に画面上部で見切れていることで、「蒲郡よりもさらに上がいる」ということまでが明示されているかのようでした。

公式Twitterにて、近い構図の画像が挙げられていました。ご覧の通り、敵の強大さをここまでわかりやすく描いています・・・!

最初からクライマックス

生徒から繰り出されるパンチの数や、それを微動だにせず受け止めた蒲郡の圧倒的な威圧感。反撃を開始した蒲郡のおぞましいほどの手数。ボッコボコにやられる生徒を追ったカメラは、ふたたび校庭の端から端へと右往左往。

これは第1話の、それも最初に登場する雑魚キャラの見せしめのためだけに行われた戦闘なのですが、そうとは思えないほどの迫力で描かれています。ド派手なアクションが最初から豪快かつ丁寧に描かれていることから、この作品の魅力が「徹底されたアニメーション表現」にあることを気付かされます。

倒すべき敵と標高差

その後、主人公・纏流子が街へやって来ます。流子は、目的の転校先である本能寺学園を睨みつけます。その標高差は天と地。画面中央、下部ギリギリに流子が立ち、視点の先、画面中央の上部ギリギリに本能寺学園の頂上が位置しています。これから始まる物語が、「纏流子が本能寺学園のトップを正面切って目指す」というものであることが明確に描かれているのです

鬼龍院皐月までの距離を明示

学校にやって来た流子は満艦飾マコによって本能寺学園についてのあらかたを知ります。そして生徒会会長の鬼龍院皐月が登場します。極制服を持たない多くの平凡な生徒たちが列をなして頭を下げ、皐月が歩くための一本道を作ります。纏流子は、本能寺学園のトップが狙いなわけですから、その一本道の真ん中、鬼龍院皐月の正面に立ち文句を売ります。

この際、皐月と流子の間には十数の階段があり、そう遠くありません。片裁ちバサミの情報を狙っている流子にとっては絶好のチャンスです。皐月がハサミの情報を匂わせると、すかさず飛びかかりました。

ただし、皐月と流子にはまだ物理的ではない距離があったのです。飛び出した流子は、二つ星極制服の刺客、ボクシング部部長・袋田隆治によって叩きのめされてしまいました。同じ学校の、それも十数段という近い距離にいながら、正面切って襲いかかるにはあまりにも遠かったのです。

強調表現

インパクト大のテキスト

単純な話ですが、アニメにはテキストが存在しなくても問題はありません。当然ながら、絵が動けばアニメーションです。テキストがなくても構わないのです。そう思ってしまいがちですが、こと『キルラキル』に関しては、テキストが記号としてむしろ大きく機能していました。

登場する各キャラクターは誰も彼もみな、個性が立っています。彼らが持っている強いクセをさらに際立たせるのは、Fontworks社の「ラグランパンチ(※1)」というインパクトが強大なフォントでした。

(※1) Fontworks『もじがたり』Chapter1:ラグランパンチ アニメ:キルラキルで行われた文字表現

『キルラキル』は作中で言葉遊びが多様されるため、文字にした方が印象に残る表現が見受けられました。赤く染めた「ラグランパンチ」で記された文字を画面いっぱいに表示し、時には、キャラよりも下層に配置するなどして、テキストがアニメの中の記号として最大限機能するような演出が、キャラクターたちの個性や迫力をさ強固なものにしていました。

たとえば、纏流子の必殺技「戦維喪失」は駄洒落ですが、音だけで聞くより、ゴッテゴテに作られたテキストとして大々的に表記されると、それが駄洒落であることがわかる上にインパクトが生まれ、必殺技の印象を強めてくれました。

また、耳で聞くだけでは何がなんだかわからなくなってしまいそうな長いワードに関しても、たとえば『本能寺学園ボクシング部運動強化型二つ星グローブ』と画面いっぱいにテロップ表示してしまうことで、視聴者の脳へダイレクトに刻みつけるかのようなインパクトを与えていたのです

後に発売された「脚本全集」の表紙にも、このフォントのインパクトが活かされていました。

まとめ

 『キルラキル』は、話の展開こそ王道的です。言ってしまえば、このあともさらなる強敵が現れる一方、着実に力を付けていく流子という展開は最初からわかってしまいます。そして皐月の元まで到達したその先に待っているのは・・・・・・なのですが、ここはぜひ視聴して確認してみましょう!

 さて、そんな王道アクションストーリーであるこの作品のどこに魅力があったのでしょうか。それは、徹底的に作り込まれたアニメーション表現でした

 事実、『キルラキル』を制作したTRIGGERの創立メンバーによって手がけられた『天元突破グレンラガン』が文化庁メディア芸術祭アニメーション部門、優秀賞を獲得したことについて、以下のようなコメントが掲載されています。

「すべてが、かつて表現されたことの焼き直し、引用ではないか」「かつてこの種の作品は、何度も作られたじゃないか」。本作は、その2つの理由で一旦は否定された。確かに、本作は数々の過去作品の記憶を相当な密度でガジェット化している。だが、本作の本当のおもしろさはそこにあるわけではない。ガジェット化されたものは、あくまで“舞台装置”にすぎず、表現の核をなしているものは“製作者たちが信じているアニメーションの表現クオリティ”だ”

引用元| 文化庁メディア芸術祭歴代受賞作品 アニメーション部門 第11回 優秀賞

引用の通り、たしかに物語にはどこか見覚えがあるようで、鋭い視聴者には予測ができてしまうかもしれません。しかしながら、堂々と王道的に展開しながら大迫力なアニメーションとして楽しませる『キルラキル』は、まさに「魅せるエンタテイメント」と言えるでしょう。

そして、一見すると古く見覚えのあるように思えてしまうストーリー展開を、さらにわかりやすく強烈に明示する誇張こそが、リッチなアニメーション表現を支えているのでした。


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