【ヤマノススメ】山を降りたらシビアな現実が。「格差」「人見知り」描写が妙に生々しい・・・!

公開日 : 最終更新日 :

2013年から2018年に渡り、第1期から第3期、その途中にはOVAまで製作されたアニメ『ヤマノススメ』。山登りを扱うこの作品は、リアリティの高い場面が非常に多く、富士山はもちろんのこと、高尾山や天覧山、三つ峠山など、実在する場所がたくさん登場します。その甲斐あってか、主人公たちが暮らす埼玉県飯能市を中心に、コラボグッズやキャンペーンなどが数多くみられました。

そんな登山を題材にした『ヤマノススメ』ですが、山に関すること以外でもリアルな、言い方を変えると 「生々しい」 場面が少なくありませんでした

目次


経済格差

『ヤマノススメ』ファンであれば誰もが知っている、家庭ごとの経済格差。最初から随分と重い話をするようですが、これは何も、意地悪く作品を斜めに見てやろうというつもりではありません。主要キャラ4人の家庭において、経済格差が明確に描かれているために取り上げたのです。

唯一安心できるのは、経済的に格差があることで誰かが何かを諦めざるを得なかったり、悔しい思いをしなければならないという話はないということです。家庭に余裕があるように思えるキャラでも、アルバイトをして道具を買ったり、他のキャラに比べて厳しい家庭環境であっても、母から登山用に靴をプレゼントしてもらったりと、それぞれが置かれた環境でしっかりとやっていっています。むしろ、家庭環境に多少の差はあれど、4人が共に過ごす日々さえあればそんなものは取るに足らない、といった具合で描かれている印象です。   とはいえ、彼女たちから時折、その格差を感じずにはいられないセリフが発せられます。決して悪意はない、というより悪意がないからこそグッときてしまう場面がいくつかありました。

主人公・雪村あおいとその親友・倉上ひなたの家は、基本的には十分に中流か、それ以上といえるでしょう。途中から仲良くなる、あおいとひなたが通っている高校の1つ上の先輩・斎藤かえでもまた同じです。この3人の家庭環境と、もう1人の主要キャラである中学生・青羽ここなの家庭環境を比較してみます。

あおいの家

まず、あおいの家は外観からして相当に大きいのがわかります。「芸能人 家」と画像検索していただくとちょうど良いのですが、おそらくは、そこに出てくる家々よりも大きい造りではないでしょうか。何か小さめの施設だと言われてしまえば納得もいくほどの大きさです。また、あおいの部屋には、部屋の中でありながら高低差が設けてあります。

扉を開けて部屋に入ると踊り場のような直線があり、その中央から3つの段が設けられ、部屋として機能するメインのスペースが低い位置に作られています。そもそも、部屋に高低差があるという点だけでもなかなかにこだわった作りですが、その上、踊り場を含めない居住スペースだけでも十分な広さを備えています。

ひなたの家

続いてひなたの家ですが、まずもってお風呂が相当に贅沢な作りです。足を曲げて入りさえすれば、同時に10人は入浴できそうです。広さもさることながら、作りも豪華で、木材で作られた浴槽の横にポール状の間接照明が2本立ち、壁の1面は巨大な窓張りになっています

洗い場は、さながら小さな民宿のそれと同じくらいの広さでしょうか。家にある以上、単身での使用をメインに作られているはずですが、宿泊施設の共同浴場のレベルには達しているように思われます。また、庭も広く、テントを張って4人でキャンプをしてしまえるほどでした。

かえでの家

そして、かえでの家もまた、非常にしっかりとした造りで、上記した2人の家の大きさと大差はないでしょう。かえでの部屋は、広さこそあおいのそれに比べれば、普通の単身部屋程度にはなってしまうのですが、かえでの部屋には、彼女が山登りを始めた中学時代から手に入れてきた数々のザックや登山靴が置かれています

登山道具は1つ1つが値の張るものですから、それらを複数持ち合わせているということだけでも、十分に経済的なゆとりを感じられます。

ここなの家

一方、ここなの家はどうでしょうか。公式に引用できる画像が存在しませんが、「木造2階建て アパート」などと検索をかけていただければ、およそ近いものが出てくるかと思います。他の3人が住んでいるのは一戸建て住宅ですが、ここなの家はアパートです。エントランスやオートロック等はもちろんなく、自転車置き場などもなさそうです。メインの居室はリビングというより「和室の居間」といった感じでしょうか。

また、浴室はどうでしょうか。他の3人の家の浴室には、浴槽に対して手すりが備え付けられていたり、今どきのガス給湯器リモコンが壁面に取り付けられていたりしていました。しかし、ここなの家のお風呂は今もまだ給湯器がレバー式で、ガスを入れる際にレバーを回すと「カッチッチッチッチッチ...」と音がするタイプのものでした。ここなが母と一緒にお風呂に入った際には、膝を折り曲げてやっと2人が入れるような状態でした。広さとしては一般的に普及しているサイズの浴槽なのでしょうが、他の3人の家のお風呂を見せられてしまった以上、そこに差を感じざるを得ません。とはいえ、ここなの家が特筆して古いというわけでもなく、今もまだ旧式のガス給湯器が使える家は数多く存在するでしょうし、木造2階建のアパートはそれこそいくらでもあるでしょう。

ここなの家は、ここなとここなの母との2人暮らしで、父に関する情報は作中に出てこないため不明です。いわゆる「シングルマザー状態」で暮らしています。ここなの母はここなを養っていくため、時には、日をまたぐほど遅くまで働いているようで、決して余裕のある生活とは言い難いかもしれません

そんな前提を踏まえると、ここなの何気ない言葉が、時折、われわれ視聴者に刺さることがあります。

ここなの口癖「久しぶりー!」

そのセリフは突然放たれました。「手足が伸ばせるお風呂って、久しぶりー!」。シリーズ2期『ヤマノススメ セカンドシーズン』の第1話で、ひなたの家のお風呂に入ったここなが発した言葉です。ここなの身長は144cmですから、実際には自宅の浴槽でも手足を伸ばすことは可能でしょう。

ただ「気兼ねなくゆったりとした姿勢でいられる」という意味では、やはり彼女の家のお風呂では少し手狭だったのかもしれません。ここなの母は毎日のように働き詰めで、ひなた家のように頻繁に家族旅行をするようなこともない以上、温泉や銭湯へ浸かる機会も少なかったのかもしれません。ひなたの家の大きなお風呂に入れた時は、心底嬉しかったことでしょう。

このように、ここなは普段の生活であまり遭遇できない体験をすると、妙に嬉しがる傾向があります。

セカンドシーズン5話でクレープを食べた際には「クレープなんて久しぶりですー!」と、同じく5話の結びでソフトクリームを食べれば「ソフトクリームなんて久しぶりですー!」と。『ヤマノススメ おもいでプレゼント』では、「バームクーヘンなんて久しぶりですー!」と放っています。どれもここなは喜んで食べているため、甘いものを避けているということもなさそうです。ということは、どうやら何かしらの理由で食べる機会が少ないということでしょう。

ここなの家が決して裕福ではないということ知った視聴者にとっては、これらのセリフから何か切ないものを察してしまうのではないでしょうか。ただし、そう放つここな本人からは、悲哀や自虐は微塵も感じられず、むしろ、久しぶりに食べる甘いものに対して、心の底から感動している様子がうかがえます

ここなはとても優しい子です。あおいとひなたが喧嘩をすれば、仲直りのサポートを担うことだってあります。もっとも、高1の喧嘩を中2に仲裁してもらうというのは随分と大人げないような気もしますが。また、先述したクレープやソフトクリームなどを食べる際は、一緒に食べているあおいやひなたから奢ってもらっているような描写はありませんでした。となると、中学生なりに自分のお小遣いで買ったのでしょうか。甘いものを食べるたびに「久しぶりですー!」と発していることから、普段は金銭面を考えて買い食いはせず、かといって、付き合いの中でみんなが美味しいものを食べる際には、自分も躊躇せずしっかりと楽しむ姿勢を持ち合わせているということでしょうか。自分だけ「お金がないから...」などと言って空気を重くしないように気を遣っているのかはわかりませんが、少なくとも、金銭的な差のせいで微妙な空気になるシーンはありませんでした。

正直なところ、ここなの家庭環境が特筆して苦しすぎるということはないでしょう。たしかに、買いたいものを買いたい時に買える機会は少なさそうですし、他の3人の家庭と比べてしまうとどうにも苦しく見えてしまいますが、母が頑張って働いてくれているおかげで、ここなは十分に暮らせています。そして、そんな母の頑張りを間近で見ているからなのか、ここなは本当に優しく、気遣いもできる子です。ここなの誕生日を、ささやかながら一緒に祝おうとするここなの母が、実際には仕事で帰りが遅くなり、コンビニのケーキしか買えずじまいだった際に、ここなは母を責めるようなことは一切せず、徹底して優しい言葉をかけていました。そして、ここなが欲しがった靴をサプライズで用意してくれていた母に、感謝の気持ちをこれでもかと伝えていたのです。

ここなが無邪気な感想として発する何気ないセリフからは、他のキャラたちとの経済的な格差を感じざるを得ないにも関わらず、重く苦しい話にならずに済んでいるのは、ここなが喜びや感謝を全面に表現する健気さと、他人を思いやることのできる優しさを持ち合わせているからこそなのでしょう

人付き合いが苦手な人のリアル

今度は、あおいの話をします。あおいは、人付き合いが苦手です。そのことは第1期『ヤマノススメ』の1話目で明言されています。また、あおい自身が「高校生になっても、1人で楽しく遊ぶんだ!」と息巻いていることから、中学時代、あるいはそれよりも前から1人でいることを好んでいたことがうかがえます。

さて、一般に「コミュ障」と呼ばれるような性格を持つキャラクターは様々な作品に登場します。ただし『ヤマノススメ』の主人公・あおいについては、その性格が作品の中のわかりやすい記号としてだけではなく、むしろ、「実際の人間が持つ、人格のいち要素」として生々しく描かれています

舞台は引き続き、1期の第1話です。高校入学初日、あおいはクラスメイトから「みんなで放課後にお茶でも」と誘いを受けたものの、断りました。ただし、この断り方にリアリティが含まれていました。

断るのもひと苦労

本来、誘いを断る時は「ごめん、今日は行けないんだ」などと軽く伝えればいいのでしょうが、誘いを受けたあおいが放ったセリフは「ごめんなさい!今日は法事があって、そのあと夕食の買い出し頼まれてて、それと、犬の散歩と、それから、それから・・・」です。あおいから早口でまくし立てられた相手は、引き気味であおいの元を離れて行ってしまいました。

はたして、この時のあおいの返答はどうだったのでしょうか。誘ってくれた相手の話を聞こうとする姿勢よりも、いかに自分が「相手から悪く思われないか」という点を優先して話をしているように見えますよね。何かの予定でごまかそうとするも、自ら墓穴を掘ってしまうせいでどんどん言い訳がましくなっています。こういった特徴は、人付き合いが苦手なタイプにありがちなのではないでしょうか。あおいと同様、角を立てないように「法事」を理由にして誘いを断ったことが、みなさんにもありませんか?

もちろん、あおいが述べた理由はすべて嘘です。誘いを断った直後、あおいは心の中で「帰りにお菓子の材料を買おう!生地屋さんで新チャームも探してみよう!図書館にも寄って...!高校生になっても、一人で楽しく遊ぶんだ!」などとわめき散らかし、ひとりで楽しむ放課後を想像して嬉々としています。あおいがたしかに人付き合いを避けていることがわかります。

友達ができた

あおいは最初、人見知りな性格と、それに伴うひとり趣味が高じて、友達と呼べるような人はいませんでした。その中で幼馴染のひなたと再会し、ここな、かえでたちとも登山を通じて絆を深めるほか、山で出会った女の子・ほのかや、新しく始めたバイト先の先輩・ひかりとも仲良くなり、当初のあおいに比べて明るく社交的になってきたように思えます。

一方、場面は変わって第3期『ヤマノススメ サードシーズン』の第4話。高校1年目の2学期になり、あおいが人見知りだという描写も少なくなってきた頃、あおいはふと、心の中でつぶやきます。

「2学期になってひと月たったけど、クラスにはまだひなた以外の友達がいません」

そうです。明るくなってきたといえど、あおいにはまだクラスに友達がいなかったのです。高校に入ってから夏休みが終わるまでの間、ひなたたちと出会い、色々な経験をしました。時には勇気を出して、苦手な高所に挑戦したり、アルバイトだって始めました。ただ、あおいは今もまだ人見知りを克服できていなかったのです。朝、あおいと共に教室に入っても、みんなに挨拶をするあおいの姿を横目に、誰にも挨拶ができない自分を認めざるを得なかったのです。

休み時間になり、ひなたへ話しかけに行きますが、ひなたは他のクラスメイトとの雑談に夢中です。近づいて、おそるおそる「ひなたぁ...」と呼んではみたものの、会話の輪に割り込んで中断させてしまった上に、他の子たちの視線を気にしてか「なんでもない!」と足早に席へ戻ってしまいます。あげく、あおいは自己嫌悪に陥り、諦めてひとり編み物をすることにしました。

自分のことでいっぱいいっぱい

中学時代と同じようにひとりでいることも悪くはないと思いつつも、山登りやバイトを通じて友達ができたことで、クラスにも他愛のない会話をする友達ができたらいいのになと考えるあおい。

その時です。クラスメイトの「みお」があおいに話しかけてくれました。みおというのは、高校入学初日に「みんなで放課後にお茶でも」とあおいにも声をかけてくれたクラスメイトなのですが、いつも1人で過ごしているあおいを気にかけてくれたのか、2学期の始まりという声をかけやすいタイミングで、気軽に、それでいて自然に気を配りながら、あおいが話しやすそうなテーマに絞って会話を広げてくれます。まずはあおいの手元にある編み物のこと、それから、あおいのバイト先である洋菓子屋であおいを見かけたこと、そして山登りのこと。質問責めにならないよう、みお自身の話を交えながらも、あおいに話をさせながら丁寧に聞いていきます。まさにこれぞ、コミュニケーション強者の余裕といったところでしょうか。

しかし、この場面のあおいには、人付き合いが苦手な人のリアルな描写がうかがえました。

みおがあおいの話を聞くことに徹している一方で、あおいはというと、話しかけれらた驚きからなのか、直前にひなたへ話しかけようとして失敗した際の、自身の挙動不審ぶりがフラッシュバックしているのか、とにかく必死に言葉を繋ごうとします。

コミュニケーションに苦手意識を持っていたあおいのことです。みおが、あおいのしていることや、あおい自身に興味を持って話を聞いてくれているのに対し、あおいは、みおに興味を持って何かを質問するようなことはしませんでした。というより、そこまで気を回すことなどできなかったのでしょう。結果として、あおい自身が聞かれたことについて、どんどん話を重ねていくようなスタイルの会話となりました。その様相は、小さな子どもと大人が話しているかのようです。あおいにとって、慣れない人との会話は相手とのキャッチボールを楽しむというより、自分が変に思われないかということの方が重要だったのかもしれません。この場面に、人付き合いが苦手な人にありがちな「何か話さなきゃと考えすぎて、自分の話ばかりしてしまう」といったような特徴が、非常に生々しく描かれていました

ただ、やはり嬉しかったのでしょう。あるいは、みおの丁寧なコミュニケーションのおかげでしょうか。途中からあおいは、落ち着いて会話を楽しんでいるように見えました。

もはや入学当初のあおいとは違います。山登りを通じ、あおいなりに成長したのでしょう。みおから「放課後遊びに行こう!」と誘われると、今度は誘いに応じました。その表情からは、少しの不安が浮かびつつも、期待と勇気の両方がうかがえました。 

放課後、ひなたも含め、クラスメイト5人でカラオケに行くと、あおいは自分が変に思われないかと恐怖に襲われる場面もありましたが、無事、みんなから受け入れてもらえ、その日を境にクラスメイトと仲良くなることができました。最終的には、ひなたがいない日にみんなと遊びに行けるまでになりました。

クラスメイトが優しかったことであおいには新しい友達ができましたが、あおいがそうなるまでにとった言動が、人間関係を苦手とする人からすると、非常にシビアで細かく、生々しいほどに描かれており、見ていてハラハラしてしまった視聴者も多いのではないでしょうか。

何はともあれ、高校に入って最初にひなたが無理やり山登りへと連れ出してくれたのが、あおいにとっては良いキッカケだったのかもしれません。

まとめ

改めて言いますが、『ヤマノススメ』は山に登ることを取り扱った作品です。話の主軸は登山にあります。

山に登るということは、基本的にはしんどいことでしょう。作中、何度もしんどい思いをするキャラたちが描かれます。体力的にもそうですし、お金もかかります。疲れれば、自分を責めたり周りを責めたりしてしまうこともでてくるでしょう。山を登っている間は、どうしようもない感情が、自他問わず見えてしまってつらいかもしれません。しかし、登りきってしまえば、達成感と景色のおかげでそんなものは吹っ飛んでしまうということなのでしょか。彼女たちは、共に登りきったことを称え合い、次の山を目指します。

たとえ一緒に山を登った仲間でも、山を降りてからも常に同じ気持ちで居られるとは限りません。考え方は違いますし、彼女たちのように喧嘩もすることでしょう。

ただ、考え方や価値観、家庭環境や性格など、お互いに違う部分があろうとも、同じ山を目指し、同じ景色を見ようとする限り、一緒にいられるのかもしれませんね。


関連記事


【Aチャンネル】"振り向きながら バイバイ" という至高の歌詞について

2008年から「まんがタイムきららキャラット」にて連載中の、黒田bb氏による4コマ漫画『Aチャンネル』。2011年にアニメ化し、OVAも製作されるほどの人気を誇るこの作品の魅力は、エンディングテーマ曲における最後のワンフレーズ、<b>「 つぎの角で振り向きながら バイバイ」</b>という歌詞に凝縮されています。タイトルを『ハミングガール』とするこの主題歌の作曲は、アニソン界に知らない人はいない<b>音楽制作集団MONACA所属の神前暁氏</b>が、そしてその作詞を、これまたアニソン界に知らない人はいない<b>こだまさおり氏</b>が手掛けるという、まさに夢のタッグによって製作された曲です。曲の雰囲気としては、マーチのように明確で軽快なリズムを刻みながら、楽しい放課後に中の良い友達と一緒に帰っているような気分にさせてくれるもので、歌詞もまた同様にそういった内容となっています。今回冒頭で紹介した「次の角で 振り向きながら バイバイ」という1行は、この曲の最後を締めくくるフレーズとなっています。では、この歌詞がいったいどのように『Aチャンネル』を描写しているのかという話をしていきたいと思います。


【ガーリッシュナンバー】声優業界を描いた問題作!クズな千歳と生存戦略

『ガーリッシュナンバー』は、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」等で人気のライトノベル作家・渡航が書き上げた小説を元に、2016年にコミック化を経てアニメ化したメディアミックス作品です。声優業界を扱ったこの作品には「この業界はおかしい」というセリフが出てきます。その言葉のとおり、声優業界が面白おかしく描かれており、それは時に現実と重なり、視聴していて辛い気持ちになることもあるかもしれません。実際、周囲からは「不快」という声が多かったそうです(※1)。(※1)[【NIZISTA「『ガーリッシュナンバー』は祈りなんです」賛否両論!? 声優業界を描いた作家・渡航インタビュー① 】より](https://nizista.com/views/article2?id=5dbe2260bb8c11e6838b1bb0eb30143c)『ガーリッシュナンバー』はあくまでフィクションであり、実際の声優業界とは異なるはずです。ただし、アニメを愛好している人であれば、噂で聞きかじったことのある業界話や、想像できてしまうネガティブな面が、リアルに感じられるかもしれません。特に、女子大生でありながら新人声優の主人公・烏丸千歳(からすま ちとせ)は明確にクズとして描かれており、この作品から感じられる不快さの多くは彼女によるものでしょう。新人声優でありながら随分と大きな態度を取る千歳と、彼女が息する声優業界に生じているいびつな状況は、現実に存在するブラック環境を想起させます。そういった、業界の暗部が描かれているせいなのか、本編が始まった段階からどうしようもなくクズな千歳が、どこか狂っている「おかしな業界」の中では、むしろ魅力的に思えてきてしまうから不思議です。千歳のクズさというのは、ある人にとってはただムカつく一方で、ある人にとっては救いとして写るかもしれないのです。今回は、『ガーリッシュナンバー』の中で声優としてサバイブするクズ、もとい主人公の烏丸千歳が、なぜ魅力的に見えるのかという点を検証していきます!





【のんのんびより】 ウチはいなかに住んでるのん? - その①

2013年に1期が放送され、2015年には「りぴーと」と銘打った2期、そして2018年には劇場版と、コンスタントに最新作が放映されてきた人気アニメ『のんのんびより』。田舎暮らしの子どものたちの日々を描いたこの作品は、田舎という舞台において人々が暮らしていく際のふるまいや所作を、丁寧に、そして徹底的に描いていることが魅力です。その細やかな気配りは、登場人物たちが実生活で振舞う何気ない所作や、彼女たちが交わす言葉から見出すことができます。彼女たちが住んでいる村(※1)において、その中にいる人同士での会話にのみ通じる意思疎通の方法があるのは、生活している以上、あたりまえのことなのです。したがって、たとえ視聴者が知らないであろう言葉だったとしても、彼女たちにとってはわかりあえる言動であり、それをわざわざ説明するということはありません。この作品は、彼女たちの生活をそっと覗くような視点で作られているのです。彼女たちが当然のようにして振舞う説明不要のコミュニケーションが、ときに、ほんの一瞬だけ垣間見えることで、彼女たちが、”いまこの瞬間” を暮らしていっていることの鮮烈さを感じ取ることができるのです。_(※1)作中に登場する土地が「村」であるか「町」であるかは明記されていませんが、人口が少なく自然が生い茂っているという環境から本連載では一律に「村」と記します。_[anichantopic id=160][anichantopic id=193][anichantopic id=194]





関連タグ

ヤマノススメ ネタバレあり 紹介記事